日に日に、俺のビートルズ離れは進んでいた。 最近の曲にも耳を傾けるようになり、聴く音楽の幅は広がってきていた。 よく、中古CDショップで100円シングルを買って帰った。 しかし、そこで事件は起こった。 まず、その説明をする前に、俺の妹の紹介をしておこう。 俺の妹は、大の「Paul McCartney好き」だ。 「タトゥー」、「アヴリル・ラヴィーン」、「エミネム」を聴く、自分の友人を、 「流行の曲しか聴かない奴は嫌い」と言い放った。 「洋楽だからなんでもかっこいいと思っているんじゃないのか」 と皮肉をかます始末だ。 俺は、中古ショップでオレンジレンジの上海ハニーを買った。 それを自宅のCDプレイヤーで聴こうとした。 しかし、雑音だらけでまったく聴こえなかった。 あれ?ついに壊れたかな?と思った俺に、上海ハニーのディスクに「COMPACT DISC」の表記が無いことを発見した。 これは「CCCD」だったのだ。 俺はあろうことか、オレンジレンジでプレイヤーをぶっ壊してしまったのだ。 「もっと、マシなの聴いて壊せよ!」 妹からそう言われ、何も反論できなかった。 翌日。学校から家に帰ると、鍵がかかっていた。 俺は鍵を開けて家に入った。どの部屋の電気も消えて真っ暗だった。 俺は導かれるように2階へ上がった。 すると、パソコンの部屋から、かすかに光が漏れていた。 なんと、パソコンが着けっぱなしだったのだ。 しかも、なぜか「Microsoft Word」が開いていた。 そこには縦書きで、次のような文章が書かれていた。 最近の若者 (妹の名前) 「オレンジレンジよくね?」 私の兄がとんでもないことを言い出した。 今まで、「Beatles」などという、古くてもよい音楽だけを聴いていると思っていたのに、ついにここまでキてしまった。 確かに、兄の音楽センスはいかがなものかと思ったことは多々あった。 ジョン・レノン馬鹿だったころだ。しかし、愛すべきPaul McCartneyの親友でもあり、美しい曲も書いていたことから、私は理解していた。 これは兄の音楽の趣味が「最近の若者」に近づいたということなのだろうか? しかし、これは「いいこと」だと手放しでは喜べない。もう少し考える必要がありそうだ。 主体的な音楽の趣味を持たず、とりあえず、流行の音楽を聴いて 「マジよくね?」 というような奴がムカつくと言っていた、妹の明らかな俺へのあてつけだった。 俺は「オレンジレンジよくね?」などという発言はしたことがない。 ちょっとCDを買って帰っただけなのだ。 説明文調で書かれた意図不明のメッセージ。 真意は今でもわからない。 ただ、もう、絶対にコピー・コントロールCDは買わないと、心の中で誓った。 |
今回、「オレンジレンジ」が登場しましたが、一応、ファンの方とオレンジレンジの皆さんに謝罪します。 いや、俺としては、案外好きなんだけどね。 ただ、「KICK THE CAN CREW」は聴くに耐えないですね(結局失礼)。 |