No.17 洋楽バカ(後)

日に日に、俺のビートルズ離れは進んでいた。
最近の曲にも耳を傾けるようになり、聴く音楽の幅は広がってきていた。

よく、中古CDショップで100円シングルを買って帰った。

しかし、そこで事件は起こった。



まず、その説明をする前に、俺の妹の紹介をしておこう。

俺の妹は、大の「Paul McCartney好き」だ。
「タトゥー」、「アヴリル・ラヴィーン」、「エミネム」を聴く、自分の友人を、
「流行の曲しか聴かない奴は嫌い」と言い放った。
「洋楽だからなんでもかっこいいと思っているんじゃないのか」
と皮肉をかます始末だ。



俺は、中古ショップでオレンジレンジの上海ハニーを買った。
それを自宅のCDプレイヤーで聴こうとした。

しかし、雑音だらけでまったく聴こえなかった。
あれ?ついに壊れたかな?と思った俺に、上海ハニーのディスクに「COMPACT DISC」の表記が無いことを発見した。

これは「CCCD」だったのだ。

俺はあろうことか、オレンジレンジでプレイヤーをぶっ壊してしまったのだ。
「もっと、マシなの聴いて壊せよ!」
妹からそう言われ、何も反論できなかった。





翌日。学校から家に帰ると、鍵がかかっていた。
俺は鍵を開けて家に入った。どの部屋の電気も消えて真っ暗だった。
俺は導かれるように2階へ上がった。
すると、パソコンの部屋から、かすかに光が漏れていた。
なんと、パソコンが着けっぱなしだったのだ。
しかも、なぜか「Microsoft Word」が開いていた。
そこには縦書きで、次のような文章が書かれていた。


最近の若者      (妹の名前)

「オレンジレンジよくね?」
私の兄がとんでもないことを言い出した。
今まで、「Beatles」などという、古くてもよい音楽だけを聴いていると思っていたのに、ついにここまでキてしまった。
確かに、兄の音楽センスはいかがなものかと思ったことは多々あった。
ジョン・レノン馬鹿だったころだ。しかし、愛すべきPaul McCartneyの親友でもあり、美しい曲も書いていたことから、私は理解していた。
これは兄の音楽の趣味が「最近の若者」に近づいたということなのだろうか?
しかし、これは「いいこと」だと手放しでは喜べない。もう少し考える必要がありそうだ。



主体的な音楽の趣味を持たず、とりあえず、流行の音楽を聴いて
「マジよくね?」
というような奴がムカつくと言っていた、妹の明らかな俺へのあてつけだった。
俺は「オレンジレンジよくね?」などという発言はしたことがない。
ちょっとCDを買って帰っただけなのだ。

説明文調で書かれた意図不明のメッセージ。
真意は今でもわからない。
ただ、もう、絶対にコピー・コントロールCDは買わないと、心の中で誓った。
今回、「オレンジレンジ」が登場しましたが、一応、ファンの方とオレンジレンジの皆さんに謝罪します。
いや、俺としては、案外好きなんだけどね。
ただ、「KICK THE CAN CREW」は聴くに耐えないですね(結局失礼)。
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